札幌地方裁判所 昭和43年(ワ)504号 判決
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〔判決理由〕<証拠>によれば、訴外丸勢商事株式会社(以下丸勢商事という。)は寝具の月賦販売を業とする会社であつたが、昭和四一年二月頃不動産部をつくり宅地造成ならびに分譲も行うことを計画し、同年三月二八日原告から本件土地を代金二、〇〇〇万円で買受ける契約を締結したこと、被告は丸勢商事から、本件土地を宅地に造成したうえ分譲をするために必要な資金を本件土地を担保とするから融資してほしい旨の申込みを受けこれを承諾し、司法書士新田豊に対し、原告との間で丸勢商事が被告に対して現在および将来負担する債務を担保するため本件土地に元本極度金額三、五〇〇万円とする根抵当権を設定しかつ右債務の弁済に代えて本件土地を譲渡する旨の予約をすることならびにそれらの登記手続をすることを委任しかつこれに伴なつて代理権を授与したこと、右新田は前同日札幌市東屯田通り港寿司二階において原告との間に、右根抵当権設定契約および代物弁済予約をし、かつ原告から根抵当権設定登記の申請をするについての代理権の授与を受けたこと、なお、代物弁済予約については本件土地が農地であるところから売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記をすることを原告との間に合意し、その旨の登記申請をする代理権の授与を原告から受けたことが認められる。
つぎに原告の抗弁について考えるに、弁護士法第七二条本文前段によつて禁止されている行為は、「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件」に関して代理その他の法律事務を取扱うことであつて、右にいう「一般の法律事件」とは、同条に列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に関して争いがありあるいは疑義を有するものであること、いいかえれば「事件」というにふさわしい程度に争いが成熟したものであることを要すると解すべきである。このことは、民法第六四八条が有償の委任を認め、また商法第五一二条が商人がその営業の範囲内において他人のためにある行為をしたときは相当の報酬を請求することができる旨規定しているところからも窺えるであろう。今日の社会では委任はほとんどすべて有償であつて無償の委任はむしろ稀であるといわれている。弁護士法第七二条本文前段の規定が、社会において行われている無数の正常な法律行為の委任およびこれに伴う代理権の授与、そしてその代理権に基づく代理行為のほとんどすべてを禁止し、弁護士でなければこれをすることができない旨定めたものと解することは困難である。そうして、前記認定した事実からすれば、本件根抵当権設定契約および代物弁済契約は金融取引の正常な過程においてなされたものということができるから、弁護士法第七二条本文前段の「一般の法律事件」にあたるということはできず、原告の抗弁は理由がないというべきである。(松原直幹)